戦国武将は家紋を勝手に使うことが出来なかった!武将にとって家紋は特別なもの?!

戦国時代の武将は、先祖代々受け継がれた家の家紋のほかに、2~3個持ち使っていたと言われています。戦国時代、武将が家紋を増やし自由に使うことは出来ず、主への貢献・戦での勝利などで承る特別なものだったのです。

武将が大事にしていた家紋と、家紋を使うようになったきっかけ、家紋からみる武将の性格について迫ってみたいと思います。

 

<本来の家紋の意味とは>

武家の家紋は、自分の出身地・地位など自分の身分証明書と同じでした。

もともとは天皇や皇族が着物にあしらったものでしたが、着物にあしらった紋様を、自分牛車が他の牛車と見分けがつくように、着物だけではなく牛車につけたのが「家紋」の始まりと言われています。

天皇や皇族が使っていた家紋を武将が使うようになったのは、戦のときに敵・味方を区別するためでした。文字の読み書きが出来ない武士でも分かりやすくするようにするために用いられていたのです。

しかし、戦で功績をあげることで褒美をもらえることから、自陣の大将にどれだけ自分が活躍しているかを見てもらうときの身分証明と活用されるようになりました。

武将にとって家紋は、唯一自分のことをアピールできるものだったのです。それだけに家紋はとても重要なものとなっていきました。

 

<家紋は自由に変えられない!ご褒美でいただける特別なもの>

名だたる武将の家紋を調べると、代々一族に伝わる家紋の他に、3つ以上持っていることがあります。

しかしこれは家紋を拝領して使えるようになったものなのです。というのも、大将は戦で勝ち取った敵陣が使っていた家紋を自分のものとします。敵陣の家紋は、勝利の勲章と同じだったのです。

こうして数多くの勲章として家紋を持つ大将が、自陣で活躍した武将にご褒美として、自分の勲章である家紋を譲り、使うことを許します。

ここで初めて、代々伝わった家紋の他に勲章となる家紋を手に入れて、使うことが出来たのです。それだけに武将が家紋を2つ以上持っているというのは、自分の誇りでもありました。

家紋と一緒に旗印も気になる方もいるかと思いますが、家紋は身分証明書で、旗印は戦のチームを率いているリーダーが誰であるかが分かるようにし、軍勢の統制をはかるためのものでした。デザインや文言は、好きなように出来るのが、家紋との大きな違いかもしれませんね。さらに敵陣に、自陣に自分がいると教える目印となり、軍勢の多さなど、威圧する意味もありました。

 

<家紋には様々な種類があった>

家紋には、植物・動物・天地・調度品・文様・文字・建造物と大きく分けて7つありました。家紋にはそれぞれ意味を持ち、武将の性格や忠誠心などが表現されていました。

 

〇卍(まんじ)紋・・・仏教では、幸福や幸先がいい前兆として知られている卍。戦の勝利を招くものとして使われていました。卍には、仏教の意味の他に、日本のキリシタンが十字架の代わりに紋様を使っていたとされています。

 

卍紋を使っていた武将

■加賀八家・横山家・・・加賀藩の家老八家の一つ。八家とは奥村宗家・奥村支家・本多家・前田家(直之系)・前田家(長種系)・村井家・長家、そして横山家のことを指します。横山家は前田利家に仕えていた武将です。横山家の横山長知は、前田利家と徳川家康の間の溝を埋めた功績がありました。

家紋は横山家の宗家が「卍紋」を使用していたことから、「卍紋」を家紋としたとされている。しかし、横山長知は財政を潤し幸先のいい意味を持つ「卍紋」を大事にした。さらに嫡男・康玄が、キリシタン大名の高山右近の娘を正室に迎えたことから、キリシタンが十字架の代わりにした「卍紋」を使い続けたとされる。

前田利家と徳川家康の信頼を得て、忠誠を誓い、縁を持った高山右近への敬意を表した「卍紋」はを使っていた横山家。横山長知は、祖先を大事にし、忠義に厚い人物だったことが家紋からも分かりますね。

 

■大給松平家・高木氏・・・卍で仏教を信仰することを表していいた。卍は清和源氏の血を引くものであるという身分証明になっていた。松平家の信光が高木姓を名乗るようになってからも、信光が姓は違えど、清和源氏の子孫である身分証明として使っていた。

仏教への信仰心が厚い人物だったことがうかがえる。

 

■蜂須賀小六・・・平氏打倒の際に源頼政が高倉王(以仁王)から賜ったのが「卍紋」で、蜂須賀小六には他にも紋があった。蜂須賀小六は豊臣秀吉の家臣で知られているが、美濃の斎藤道三・尾張の織田信長にも使えたこともある。

斎藤道三の祖父が妙覚寺の僧だったこと、織田信長がキリシタンを広めたこともあり、蜂須賀小六は仕えた主に忠誠を示すことが出来る「卍紋」を主に使っていたということがうかがえる。

 

卍紋を使用した武将は、戦での勝利を願う意味の他に、仕えた主・祖先への忠誠心を表しており、さらに信仰心の厚さを持った人物が多いと言えるかも知れない。

 

〇ムカデ・毛虫紋・・・ムカデ・毛虫の後ろに動けない動きを、戦に例えて「決して後ろに引かない」戦への意気込みや想いを紋に込めた。足がたくさんあるため、心を一つに戦に臨もうと家臣に伝えるメッセージでもあった。凶暴性で攻撃性があるため、勇ましさを敵に見せ、威嚇する意味も込められている。

ムカデ・毛虫を紋として使用していた武将

■武田信玄・・・武田信玄がいる甲斐の国は、特産物が少なく農地も狭かく資金源の確保が難しい土地柄でした。しかし甲斐には、資金源となる金山がありました。当時ムカデは、鉱山や金脈を司るカナヤマヒコの神の使者とされ大事にされていました。

さらに、毘沙門天の使いともいわれていて、財宝・金運・五穀豊穣と戦の勝利を導くものとされていました。武田信玄がムカデを家紋としていたのはムカデの特性を家臣に伝えるだけではなく、甲斐の繁栄・民の幸せ・戦の勝利を願ったからなのでしょう。

■伊達正宗の家臣・伊達成実・・・ムカデとも言われていたが、毛虫を家紋としていました。理由はムカデと同じで勇ましさを敵に見せ、威嚇する意味が込められていました。伊達正宗の家臣として「武の伊達成実」と名をはせいていました。不屈の精神を持って戦に臨んでいたことから、伊達正宗からの信頼も厚かったことが分かっています。

 

ムカデや毛虫を家紋として武将は、背負っているものに背を向けず立ち向かい、主・国の民の富と繁栄のために、一生をかけた人であることがうかがえます。自ら前を向き進むことを自陣に伝え一致団結したであろう姿を想像しちゃいますね。

 

〇鶴紋・・・鶴は霊鳥として、亀と同様に長寿の象徴とされていました。

鶴紋を家紋にしていた武将

■蒲生氏・・・蒲生氏が戦で負けて、引き上げるときに道に迷い窮地に陥ったとき、1匹の鶴が、蒲生氏の旗を加えて飛び立った。そのあとを追いかけていくと、蒲生氏は窮地を脱することが出来た。それ以来、蒲生氏では鶴を「吉鳥」として家紋に使うようになった。

■森蘭丸・・・織田信長と一緒に、本能寺の変で亡くなった森蘭丸。森氏はもともと「源氏」の姓を受け継ぐ家系で、源氏の流れであることを証明し、公家から賜ったことを受け継ぐために鶴を家紋にし大事にしていた。

■肝付氏・・・当時、最高の宴の膳には「鶴の肉」を使うことが最高のもてなしとされていた。しかし、源氏・森氏の血を引き継いでいた肝付氏では、神聖なものとして祀っていた鶴を食してなかった。肝付氏が主催の宴で「鶴の肉」がないことを皮肉った島津氏に激怒し紛争が起こり後々まで響いたとされている。

 

鶴を家紋とした武将は、自分の血筋に誇りを持ち、吉鳥として末代まで長く反映することを願っていたことがうかがえる。ちなみに鶴の紋は皇族から賜ったものであることが多い。

 

〇蝶紋・・・平家を代表する家紋。織田信長は、兵士の末裔として蝶の家紋も使用してた。信長は、蝶の家紋は池田家が拝領し使用するようになった。東北では藤原氏が蝶の家紋を使用している

 

〇烏紋・・・中国では三本の足の烏が「太陽の化身」として太陽の中に住んでいると信じられていた崇高な紋。日本では神武天皇が熊野から大和へ入るときに、大和の八咫烏が道案内をしたいう逸話が残っている。熊野権現の使いとされ、熊野の鈴木氏が烏紋を使用した。熊野権現とは、極楽浄土にいる神仏が姿を変えて、熊野に現れたことを指す。神武天皇が権現の使いとして烏が道案内をしたことで、熊野は黄泉の国・極楽浄土と繋がっていると信じられ崇高なものとされた。

■熊野の鈴木氏・・・織田信長と豊臣秀吉の鉄砲隊を活躍させた戦で、敵となっていた鈴木孫市が烏紋を使っていた。熊野の鈴木氏は熊野の豪族で神主でもあった。八咫烏が案内をしなければ、神武天皇も熊野へはたどり着かなかっただろうということもあり、八咫烏を神聖なものとして祀り、家紋にした。

■伊予西園寺家の家臣・土居清良が烏紋を家紋としていた。土居の本姓は鈴木で、熊野の鈴木氏と繋がっている。

 

熊野の武士の鈴木氏は、熊野で一番権力のある神主でもあり、その地を受け継ぐものは全国にいるとされている。自分の先祖への敬意表すだけではなく、八咫烏を崇高なものとして身にまとっていたとうかがえる。

 

家紋は、自信の生い立ちを表す身分証明であることはもちろん、先祖への敬意を表したものである先祖代々受け継がれるもの・戦での忠誠心・不屈の精神などを軍の大将へとアピールする家紋・戦や功績に対して賜ったものと、3種類以上の家紋を使い分けていた武将が多い。

それだけ家紋というものは、武将にとって誇りとなり栄誉なものであることが分かった。家紋って調べれば調べるほど面白いですね。

 

 

 

 

よろしければ他の方にもご紹介ください